保護犬を飼う難しさに直結する行動と病気のリスク｜里親の心構えとは

最近は、保護犬を家族に迎えるという選択肢が広まってきましたね。

でも、いざ検討し始めると、保護犬を飼う難しさという言葉が頭をよぎり、不安を感じている方も多いのではないでしょうか？

ネットで後悔という文字を見かけたり、里親の審査が驚くほど厳しかったりすると、自分に務まるのか心配になりますよね。

また、懐かない期間がどれくらい続くのか、フィラリアの治療費はどのくらいかかるのか、といった現実的な問題も気になるところです。

それに、善意の寄付を募る団体の中には不透明な運営をしているところがあるという噂も耳にします。

そこで、この記事では、私が長年の犬暮らしの中で見聞きしてきた経験をもとに、保護犬を迎えたいと考えているあなたが直面するかもしれない壁とその乗り越え方をお話しします。

そして、この記事を読み終える頃には、不安が整理されて、新しい家族を迎えるための心の準備ができているはずですよ。

保護犬を飼う難しさの核心と行動学的なリスク

保護犬を家族に迎えるときにまず知っておきたいのは、彼らが抱える心理的なハードルの高さです。

ショップで販売されている子犬とは違い、保護犬にはそれぞれ「過去」があります。

その過去が現在の行動にどう影響しているのか、プロの視点も交えながら詳しく見ていきましょう。

元野犬が懐かない心理と扁桃体の過活動

特に元野犬の場合、人間を「優しい家族」としてではなく「捕食者や敵」として認識していることが少なくありません。

これを生物学的に見ると、脳の扁桃体という恐怖を司る部分が、過去の飢えや捕獲時のトラウマによって常にフル回転している状態なんです。

人間が良かれと思って近づく動作や、差し出す手ですら、彼らにとっては命の危険を感じる攻撃の合図になりかねません。

そして、彼らが示す恐怖のサインは非常に切実で、ただ「シャイなだけ」と片付けられない深さがあります。

例えば、目が合っただけで失禁してしまったり、数日間一度もクレートから出てこなかったりすることも珍しくありません。

これは「性格が悪い」のではなく、生存本能としての防衛反応なんですね。

そこで、私たちが当たり前だと思っている「撫でられる喜び」を教えるためには、まず彼らの脳が「今は安全なんだ」と書き換えられるまで、数ヶ月、時には数年単位の忍耐が必要になります。

また、元野犬にとって、人間の手は「撫でてくれるもの」ではなく「自分を捕まえる恐ろしい道具」に見えている場合があります。

無理に触ろうとすると、恐怖から身を守るために噛みついてしまうこともあるので、焦りは禁物ですよ。

分離不安から生じる破壊行動や夜鳴きの実態

一度「捨てられた」という経験や、過酷な環境で独りぼっちだった記憶を持つ保護犬は、飼い主がいなくなることに異常なまでの恐怖を感じることがあるのです。

これが、「分離不安」と呼ばれる状態です。飼い主がゴミ出しに立った数分間ですら、彼らにとっては「また見捨てられた」という絶望に直結し、パニックを引き起こします。

その結果として、玄関のドアを爪が剥がれるまで引っ掻いたり、家具を噛み砕いたりといった激しい破壊行動に繋がることがあります。

また、夜鳴きも深刻な問題になりやすいですね。静まり返った家の中で不安が募り、遠吠えのような悲痛な声を上げ続けることもあります。

ただ、これは、「しつけができていない」からではなく、心の底からの叫びなんです。

そして、集合住宅にお住まいの場合、この夜鳴きや破壊音が原因で近隣トラブルに発展し、泣く泣く飼育を断念するという悲しいケースも現実に存在します。

この問題を解決するには、専門家の指導のもとで「独りでも安全である」という認識を少しずつ植え付けていく必要があるのです。

それと、外の世界を知らずに育った犬や、野山を駆け回っていた元野犬にとって、都会の環境は情報の洪水です。

走行する車の音、工事の振動、あるいは風で舞ったレジ袋といった、私たちには何でもないことが彼らをパニックに陥れます。

このように、パニック状態になった犬の力は想像を絶するもので、首輪をすり抜ける、リードを噛み切る、あるいは飼い主を引き倒してでも逃げようとします。

そこで、一度脱走してしまうと、人間への警戒心が強い保護犬を再捕獲するのは至難の業になります。

そのまま交通事故に遭ったり、迷子になって二度と会えなくなったりするリスクが非常に高いんです。

そのため、保護犬の散歩では「絶対に逃がさない」ための物理的な対策が何よりも優先されます。

おしゃれな細い首輪一本で散歩に行くなんて、保護犬に関しては絶対にNGだと考えてください。

対策項目	具体的な方法と注意点
首輪・ハーネス	「ダブルリード」を徹底。首輪とハーネスの両方に別のリードを繋ぎます。
迷子札・チップ	マイクロチップは必須。さらに、一目で連絡先がわかる迷子札も。
自宅の脱走防止	玄関に天井まである突っ張り型のゲートを設置。窓の開閉にも注意が必要です。
散歩ルート	最初は人通りの少ない時間・場所を選び、少しずつ慣らしていきます。

信頼関係の構築に不可欠な3の法則

保護犬を迎え入れた飼い主さんが、一番焦ってしまうのが「いつになったら懐いてくれるの？」という点です。

でも、彼らの心には時間のルールがあるんです。一般的に言われるのが「3の法則」ですが、これはあくまで「最低限」の目安だと考えてください。

最初の3日間（Decompression）は、新しい環境の刺激が強すぎて脳が麻痺しているような状態です。

この時期に「可愛いから」と抱っこしたり触りまくったりするのは、彼らをさらに追い詰めることになります。

そして、次の3週間（Adjustment）で、ようやく家のルーチンを理解し始めますが、ここで本来の問題行動（吠えや噛みなど）が出始めることもあります。

さらに、3ヶ月（Building Trust）経ってようやく、「この人は敵じゃないかもしれない」という信頼の土台ができ始めます。

これは、長年ポメラニアンと暮らしてきた私から見ても、保護犬の心の扉が開くスピードは本当にゆっくりです。

でも、その扉が少しだけ開いたときの喜びは、何物にも代えがたいものですよ。

「1年かけて名前を覚えてくれたら満点」くらいの、広大な心で待ってあげることが、保護犬を飼う難しさを乗り越える唯一の近道かもしれません。

咬傷事故を未然に防ぐための資源防衛への理解

過酷な環境を生き抜いてきた保護犬にとって、食べ物や寝床は「奪い合い」の対象でした。

そのため、自分が手に入れたものを守ろうとする本能が非常に強く残っている場合があります。

ちなみに、これを「資源防衛」と言います。例えば、ご飯を食べている最中に器の近くを通っただけで唸る、お気に入りのおもちゃを取ろうとしたら噛みつくといった行動です。

そして、これは攻撃的な性格というよりは、「これを取られたら終わってしまう」という過去の飢えからくる防衛反応なんです。

そのため、これを力づくで抑え込もうとしたり、叱り飛ばしたりするのは逆効果なんです。

さらに「守らなきゃ」という気持ちを強くさせるだけですから。

そこで、まずは、人間が近づくのは「何かを奪うため」ではなく「もっと良いものをくれるため」だと教える必要があります。

器に手を入れるのではなく、食べている横からさらに美味しいおやつをそっと投げ入れる、といったスモールステップが必要です。

特にｍ小さなお子さんがいる家庭では、こうした犬の特性を理解せずに手を出してしまい、大事故に繋がるケースもあるため、最大限の注意と環境管理が求められます。

保護犬を飼う難しさに直結する医療と経済の壁

「保護犬は生体購入費がかからないから、ペットショップより安く済む」と思っているなら、その考えは今すぐ捨てたほうがいいかもしれません。

実際には、譲渡後に判明する病気や、過去の不適切な管理による蓄積されたトラブルで、多額の医療費が必要になるケースが非常に多いんです。

推定年齢の不確実性と潜伏する遺伝性疾患

保護犬のプロフィールにある年齢は、あくまで獣医師による「推定」なんです。

歯の摩耗具合や白内障の進み具合などで判断されますが、栄養状態が悪かった犬は実年齢よりも老けて見えることがありますし、逆に活発な犬は若く見積もられることもあります。

実は、「5歳」と言われて迎えた半年後に、実はシニア期特有の疾患が次々と見つかり、実際は10歳近かったことが判明する、なんて話もよく耳にします。

さらに、繁殖場からレスキューされた犬などの場合、無理な近親交配を繰り返された影響で、遺伝的な疾患を抱えているリスクが高いです。

膝蓋骨脱臼（パテラ）や心臓疾患、目や耳のトラブルなど、迎えた直後は元気そうに見えても、生活環境が変わったストレスで一気に発症することもあります。

そのため、こうした「見えない爆弾」を抱えている可能性を理解し、経済的な余裕を持って迎えることが、保護犬を飼う難しさを克服するための現実的な備えになります。

フィラリア感染に伴う高額な医療費の現実

野外で生活していた犬や、適切な予防を受けてこなかった保護犬にとって、フィラリア症は極めて身近で恐ろしい病気です。

これは、蚊を媒介して心臓や肺の血管に寄生虫が住み着くこの病気は、放置すれば最悪な事態になりかねません。

また、保護団体でフィラリア検査を行い、「陽性」と分かっている場合もありますが、その治療には長い年月と多額の費用がかかります。

心臓への負担を考えながら、数年かけてゆっくりと虫を駆除していく投薬治療が一般的ですが、その間は激しい運動を制限するなど、生活面での制約も多くなります。

さらに、重症化していて手術が必要な場合は、数十万円単位の費用が必要になることも珍しくありません。

フィラリア陽性の犬を家族に迎えるということは、その治療費も含めて命を丸ごと引き受けるという強い覚悟が必要です。

ちなみに、動物愛護に関する公的な現状については、「（出典：環境省の犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに譲渡等の状況）」を確認すると、いかに多くの命が新しい家族を待っているか、そしてその背景にある課題の大きさが分かりますよ。

こうしたデータを見るたびに、安易な気持ちでは務まらないなと、私自身も身が引き締まる思いになります。

ペット保険の加入制限や既往症の不担保

多くの飼い主さんが驚くのが、保護犬の「保険問題」なんです。

一般的なペット保険には新規加入できる年齢制限があり、推定年齢がシニア（おおむね8歳〜10歳以上）と判断されると、加入できる選択肢が極端に少なくなります。

また、譲渡時にすでに持病がある場合や、フィラリア陽性である場合、その疾患に関連する治療費はすべて「補償対象外（不担保）」という条件がつくことがほとんどです。

このように、「保険に入れない＝何かあったときに全額自己負担」という現実は、家計に大きなインパクトを与えますよ。

例えば、がんの治療や大きな心臓手術になれば、一度に50万円、100万円という単位のお金が飛んでいくこともあります。

つまり、保護犬を飼う難しさは、こうした経済的なセーフティネットが使いにくい点にもあるんです。

そのため、毎月一定額を「犬のための貯金」として積み立てておくなど、自前でのリスクヘッジが不可欠になります。

里親ブルーを回避するための共感疲労対策

「かわいそうな保護犬を救いたい」という高い理想を持って里親になったものの、現実の過酷さに心が折れてしまう「里親ブルー」。

これは、決してあなたが弱いからではありませんよ。

献身的に世話をしても威嚇され、家具を壊され、散歩にも行けず、近所からは夜鳴きの苦情が来る……そんな日々が続けば、誰だって「何のためにこんなことをしているんだろう」と無力感に苛まれます。

そして、これは「共感疲労」と呼ばれる、支援者に起こりやすい精神状態なんです。

そこで、これを防ぐためには、最初から「完璧な飼い主」を目指さないことが大切になりますよ。

犬と24時間向き合い続けるのではなく、時にはペットシッターさんを頼んだり、信頼できる友人に愚痴を聞いてもらったりして、意識的に「犬から離れる時間」を作ってください。

また、私自身の経験から言えるのは、飼い主さんが笑顔でいないと、犬も決してリラックスできないということです。

そのため、まずは自分の心のケアを優先することが、結果として保護犬の幸せに繋がるんですよ。

譲渡条件が厳しい背景と悪質団体の実態

保護犬の里親になろうとして、その条件の厳しさに驚く方は少なくありません。

「独身だから」「共働きだから」「マンションの広さが足りないから」といった理由で断られると、まるで自分の人間性を否定されたような気分になってしまうこともあるでしょう。

しかし、この厳しさには、過去の悲劇的な教訓が詰まっているんです。

保護団体は、救い出した命が二度と「再放棄（セカンド・サレンダー）」されることがないよう、石橋を叩いて渡るような審査を行っています。

例えば、高齢者への譲渡を制限するのは、飼い主の入院や他界によって犬が再び行き場を失うのを防ぐためになります。

また、留守番時間に制限を設けるのは、先にお話しした分離不安による自傷行為やパニックを未然に防ぐためなんですよね。

その一方で、近年大きな問題になっているのが「保護犬ビジネス」という存在です。

ブリーダーから売れ残りの犬を仕入れ、高額な「譲渡金」という名目で販売する業者が潜んでいます。

もっとも、こうした団体は一見、善意で活動しているように見えますが、実は適切な健康管理を行っていなかったり、寄付金の使途が不透明だったりすることがあります。

せっかく保護犬を迎えたいという尊い気持ちが、こうした悪意ある人たちに利用されるのは本当に悲しいことです。

そのため、私たちは「どの子を迎えるか」と同じくらい「どの団体から迎えるか」を慎重に見極める必要があります。

そこで、もしあなたが「この団体は本当に大丈夫かな？」と少しでも違和感を抱いたら、まずはその団体のSNSや公式サイトを遡ってみてください。

写真がいつも同じ場所で撮影されていたり、常に「子犬」や「人気犬種」ばかりが掲載されていたりする場合は注意が必要です。

こうした見極めもまた、保護犬を飼う難しさの一つと言えるかもしれませんね。

よくある質問（FAQ）

保護犬を検討している皆さんから寄せられる、特によくある不安や疑問についてまとめました。

理想と現実のギャップに戸惑うこともあるかと思いますが、ここで挙げる回答を一つの目安にして、これからの生活をイメージするヒントにしてくださいね。

Q1：初心者でも保護犬を飼うことは可能ですか？

はい、可能です。ただし、トラウマを抱える個体も多いため、初心者は性格が安定した成犬を選ぶのが無難です。専門家や団体のサポートを受けながら、焦らず時間をかけて信頼関係を築く準備をしておきましょう。

Q2：共働きの家庭でも里親になれますか？

留守番時間によります。分離不安がある犬の場合、長時間の留守番は破壊行動に繋がるため、ペットシッターの利用や在宅ワークなど、犬が独りにならない工夫が求められます。ちなみに、多くの団体では留守番時間の短さが条件となります。

Q3：懐かないまま一生を終えることもありますか？

可能性はあります。特に元野犬の場合、ベタベタと甘える関係ではなく「同じ空間にいる同居人」のような距離感になることもあります。そのため、その犬の個性を尊重し、過度な期待をせずにありのままを受け入れる覚悟が必要です。

まとめ：保護犬を飼う難しさを理解し命を預かる覚悟

ここまで保護犬を飼う難しさについて、あえて厳しい現実をお伝えしてきました。

でも、それは決して「飼うのをやめましょう」と言いたいわけではありません。

むしろその逆で、リスクを正しく知ることで、初めて彼らの本当のパートナーになれるのだと私は信じています。

知識がないまま「かわいそう」という感情だけで迎えてしまうと、いざ問題が起きた時に「こんなはずじゃなかった」と後悔することになり、それは結果として犬を再び傷つけることになってしまうからです。

そして、保護犬を迎えることは、確かに簡単ではありません。

ポメラニアンのような愛玩犬と15年暮らしてきた私から見ても、その困難さは想像を絶するものがあるでしょう。

でも、長い時間をかけて少しずつ、本当に少しずつ距離が縮まり、初めて手からおやつを食べてくれたときの感動は、何物にも代えがたい宝物になります。

その瞬間、これまでの苦労はすべて吹き飛んでしまうかもしれません。

それは、過去を乗り越えた犬と、それを支え抜いた飼い主さんだけが味わえる、特別な「絆」の形なんです。

※保護犬との生活で迷ったり困ったりしたときは、決して一人で解決しようとしないでください。専門のドッグトレーナーや行動診療科のある動物病院など、プロの手を借りることを強くおすすめします。また、正確な情報は信頼できる公式サイトや獣医師に確認し、最終的な判断はご自身の環境を照らし合わせて慎重に行ってくださいね。